この本は、主人公である祖父の病院を継いだ若い獣医師が祖父であるベテラン獣医師じっちゃんから指導されながら、成長していく過程を物語調で書かれています。
動物病院の闇の部分にも焦点を当て、良い動物病院と悪い動物病院の見分け方や、飼い主が知りたいと思う、獣医師や動物病院側からの話などがわかりやすく説明されています。
この本を読むきっかけになったのは、なんと動物病院での待合室に置いてある本のひとつとして手に取ったことでした。
さらさらと読んでいると読みやすかったですし、続きが気になったのと、最大の理由はこの知識は知るべきだろうと思ったことです。
『動物病院の本当のところ』の本の詳細
表題からは、よい動物病院の選び方を指南する本だと判断できます。
動物病院の本当のところ
作者:林 文明
出版社:大誠社
発売日:2015年2月24日
(※本のリンクにはAmazonアソシエイトが適用されています。)
この本のページ数は240ページ。
ペット関連の本はだいたい200~300ページなので普通だと思いましたが、文字フォントが大きいので本のボリュームとしては物足りなさを感じます。
定価は、1,300円です。
本の帯の後ろ側には、知っとく!動物病院と書かれていて、
- 病院にはどんなクレームが?
- ペットの正しい飼い方とは?
- 動物病院とのかかわり方は?
- ペットを長生きさせる食事とは?
- 動物病院の一日とは?
と、5つのペットの飼い主が知りたいことの疑問がクエスチョンとして投げかけられています。
もちろん、この疑問の答えは、本に書かれていますので疑問はなくなるわけです。
読んでみて、この本を一言で表現すると、
例えば、この本には、『動物病院のシークレットとして11の大事なこと』が書かれています。
それがすべてじっちゃんから主人公の孫にあたる獣医師に投げかけられているのですが、この投げかけられている内容が、この本を読んだ人に最も伝えたいことなのだと思います。
また、1~9章までがそれぞれ違ったテーマで分けられていますので、個別で知りたい情報は、目次から簡単に検索できるようになっています。
そして、章ごとに最後に箇条書き風に大事な要点がまとめられています。
私が感じた、この本の感想
読みやすさ | |
---|---|
オススメ度 |
獣医学と獣医療の違い
この本は、主人公である開業したばかりの若い獣医師・湊光一郎と、光一郎が受け継ぐ前の院長である祖父・じっちゃん(源太)による助言や忠告などで、光一郎が獣医師として成長していく過程を、小説のような軽いタッチで物語のように書かれている本です。
光一郎は、東京ドーム近くの水道橋で、受付兼務のVTといわれる動物看護師1名だけの小さな診療所を運営しています。
じっちゃんの興味深い例え話が述べられています。
たしかに薬を注射するとガンは小さくなる。
しかし副作用で吐いたり下痢症状になることもあるし、食欲がなくなると明らかに具合が悪そうな見た目にもなる。
この治療は、治療費は毎月3万円かかり、いつ終わるかわからない。
飼い主の家族には、中学と高校に進学を控えた子供もいる。
こんな時には、
- 獣医学の立場だと、ひたすら抗がん剤治療を勧めて治療の意義を説明する。
- 獣医療の立場だと、家族のことも考え、金額も含めて飼い主さんが満足できるようなプランを提供する。
そしてこう述べられています。
- つまり獣医学とは、動物と獣医師だけの関係だが、獣医療とは、動物と飼い主んさんの関係に獣医師が補助的にかかわるものだ。
と。
動物病院のシークレット
この本の大きな主旨は、ところどころに散りばめられているシークレットを理解することになります。
たとえば、良い動物病院の見分け方や悪い動物病院の見分け方などの大きなテーマから、ガンの一種である乳腺腫瘍という、この本を読まなかったら一般人が知ってもしょうがないと思ってしまうようなテーマまで11個があります。
なかでも興味深いのは、お金編だと思います。
お金と聞くと、患者(飼い主)の治療費を思い浮かべますが、それ以外にスタッフさんの給料なども書かれています。
ネタバレしない程度で紹介すると、
- 避妊手術の手間暇が細かく説明されています。
病院によっての金額の違いは、コストカットするポイントによって違うから。 - 病院によって治療費が違うのはなぜか?
東京のような大都市は、物価や家賃、同意説明にかける時間などを考慮した処方料が加算されるから。 - 獣医師の給料は、勤務医である限り年収500万円を超えない。
開業医の場合は、運と腕とセンス次第でピンキリ。 - 獣医看護師(VT)の給料は、国家資格ではないので、初任給は月12~16万円程度。
給料が安いので、長続きしてくれなく年齢層も低い。
獣医看護師(VT)さんの給料が安いのは国家資格も関係しているのですね。
なお、今国会に法案が提出される予定です。
動物愛護法と合わせて、法案は可決されるといいですよね。
動物看護師に国家資格を=今国会に法案提出へ-超党派議連
プロローグとエピローグ
この本は、主人公の新人院長が手術したメス犬(シェットランド・シープドッグ)が、乳腺腫瘍の摘出手術をした数日後に死んでしまうことから始まります。
光一郎は、以前開業前に勤務していた大病院の院長先生(じっちゃんの弟子)の教え通りにやったはずなのに死んでしまったのです。
そのことを、じっちゃんに相談すると、それは自分の未熟さによる間違いだったのです。
主なミスは、診断的治療をしてしまったためでした。
診断的治療とは、診察の初期段階で病名を想定した治療のことです。
初期段階でレントゲン撮影や採血で判明したはずの病名を、診断的治療で注射と投薬をしてしまい悪化させたりするケースが多いそうです。
その検査には、もちろんそれなりの費用がかかります。
獣医師は無駄な検査はしたがらないし、検査が前提の診療も行いません。
結局は、シェットランド・シープドッグの死因は、乳腺腫瘍の肺への転移だったのですが、エピローグでは成長した光一郎が意外な展開へと続いていくストーリーです。
著者は、4つの動物病院を運営してる院長
著者である林文明氏のプロフィールは、
日本動物医療コンシェルジュ協会代表理事。
ノア動物病院グループ院長。北里大学獣医学修士課程修了。獣医師として実践を積みながら、1998年にはアメリカコロラド州立大附属獣医学教育病院に留学し、欧米の先進動物医療を学ぶ。現在は、山梨・東京・ベトナムで五つの動物病院を経営。24時間診療、猫専門病院、動物用CT導入による高度医療などの先進的取組みを行っている。
2008年に、動物との豊かな環境と文化を育む社会の実現のため、飼い主やペット業界従事者のための教育を目的とした、日本動物医療コンシェルジュ協会を設立。
(この書籍が刊行された当時に本に掲載されていたものです。)
プロフィールにも記載されていますが、著者は、本にも出てくる山梨県甲府市や八王子などで4つの動物病院グループを運営されています。
ホームページによると1件の動物病院は、ISFM(国際猫医療学会)という猫の医療に関する国際団体から猫にやさしい動物病院としてGold認定された『猫専門病院』です。
(クリックするとホームページに飛びます。)
病院のマークにもあるとおり、この動物病院コンセプトは、すべての動物を「ノアの箱船」に乗せる(命を助ける)を前面に掲げています。
ちなみに、この紹介している本も同じような趣旨の本です。
また、日本動物医療コンシェルジュ協会という、主にペットフードアドバイザーの資格に関する協会の代表理事もしています。
他には、下記の本も出版されています。
(片方は、共著)
レビューは少ないし微妙ですが、『愛犬を長生きさせる食事』は興味があるので、立ち読みする機会があるときにでも購入を考えてみたいです。
著者がこの本で伝えたかったこと
では、獣医師である著者がどういう気持ちでこの本を発行したのでしょうか?
そのヒントは、前書きと後書きから感じ取れます。
まず前書きでこのように書かれています。
- 『動物病院のシークレット』は、飼い主さんが動物病院へ行く時の教科書としてください。
- 本に出てくる11個のシークレットは、今飼っているペットのことを知るうえでもとても大切なことです。
また、後書きで著者はこう述べてこの本を閉じています。
- 日頃のペットの注意深い観察が診断の手がかりになります。
- 飼い主さんが動物病院や獣医師の言いなりになるのではなく、自分のことのようにあれこれと質問をして疑問点を解消してほしい。
万が一、後で悔やんでも後の祭りというか、ほぼ泣き寝入りするしかありません。
そうならないためにも、最低限の知識を持つことは飼い主さんの義務だと思います。
最後になりますが、動物の診療に無知な飼い主さんが、動物病院の獣医師やスタッフさんの言いなりにならない手がかりが、この本には多く隠されていると思いました。
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