ゴハン(餌)を食べている最中にちょっかいを出すと凶暴になる犬がいます。
この問題行動は、群れで生活していた野生時代の名残。
食べれるときにゴハンを食べなければ今度いつ食べられるか分からず、下手をすると餓死してしまうので、自分のゴハンは死守しようとする、DNAの中に眠っている習性で至極当然な行動なのです。
それがエスカレートしてくると、ゴハンの最中に邪魔をされると、歯を見せて威嚇したり噛みついたりするようになってしまいます。
この行動を、「フードアグレッシブ」といい、”ゴハンの時に凶暴になる”れっきとした問題行動のひとつです。
もちろん個体差はありますが、フードアグレッシブは元々が犬の本能なので直すのに苦労している飼い主さんも多いでしょう。
特に、この行動を大した問題でないと判断し、子犬(パピー)の時期にそのまま放置しておくと大変です。
問題行動の対処方法に絶対はありませんが、習慣になる前に解決したいものです。
そこで今回は、成犬でも「フードアグレッシブ」をこうして直したという貴重な体験談を紹介したいと思います。
県の動物愛護センターで見つけた1歳の子犬
前から犬を飼うなら動物愛護センターなどから保護犬を受け入れようと思っていました。
初めての犬を迎えるにあたり、県の愛護センターでセミナーを受け、譲渡会に参加した私は、子犬ばかりが集まる譲渡会の片隅で小さく丸まっている子犬を見つけたのです。
しかし、よくよく聞いてみると、この子は子犬ではなく成犬になったばかりで1歳。
5kgに満たない体重はやせ形で、もう少しふっくらして、約6kg程度が適正体重とのことでした。
この子に興味を持ち、施設の方へさらに聞いてみると、成犬の譲渡会参加は珍しいとのこと。
しかし、1歳を迎えてからでもしつけはできるし、この子は性格がよく、比較的誰に触られても怒らないので譲渡会に参加させることを決めたのだそうです。
ただし、犬の生い立ちやそれまでの生活環境などがわからないため、今後どのような問題が起きるかはわからないなどの説明を受けました。
子犬を迎える事ばかりを考えていた私は、「成犬を迎えるのはちょっと…」と悩みましたがまっすぐに私を見つめる視線に釘づけにったのです。
悩んでいたので、数日考える旨を伝えました。
それから数回訪問し、我が家で引き取ることになったのです。
フードアグレッシブが発覚、ゴハンタイムの緊張感
実際に家に連れて帰ってみると、しばらくは部屋の片隅から動きません。
連れて帰ってきたクレートの中でとにかくジッとしています。
今日は、おしっこやウンチはしないかもしれないことと、無理にごはんを食べなくても1~2日は問題ないので、あまり騒ぎ立てずそっとしておくようにと説明を受けていたので、とにかく見守ることにしました。
その日は、夜中に水を飲む音が聞こえた以外は、結局ごはんも食べず、排泄もありませんでした。
次の日、ごはんをあげてみるとジッと私を見つめ固まってしまったので、見られていると食べにくいだろうと立ち上がった時、小さく唸られました。
これは長丁場になるなと覚悟はしていましたが、しばらく放っておくとごはんを食べる音が聞こえ安心していました。
その後、私の前でもごはんを食べるようになりましたが、問題はごはんを食べている最中。
ごはんを差し出してから食べ終わるまでにピクリとでも動くと、うなり声をあげ、固まります。
調べてみると、「フードアグレッシブ」というごはんへの執着行動でした。
私は、愛犬がごはんを食べ始め、食べ終わり、食器から興味がなくなるまでクレートの前から動けなくなったのです。
もちろん、食べているごはんに手を出そうとすれば噛まれるでしょう。
おやつも食器の中に放り込み、手から与える事はできませんでした。
フードアグレッシブの改善のために我が家が実施したこと
これではいけないと思った私は、フードアグレッシブに関する情報を集め、一番気軽にできそうだった方法を試してみる事にしました。
それは、ごはん食器を地面に置かず、手で持ったまま与えること。
やってみると、愛犬はポカンとした顔で私を見つめています。
早く置いてよ。
食べられないじゃないか
そう言っているようでした。
それでも、私はとにかく我慢。
手に食器を持ったまま固まる犬と私。
こう着状態のあと、愛犬は恐る恐るごはんを食べ始めました。
私はと言えば、動けば指をかまれるのではないかと思い、動けずにいました。
しばらくはお互いに「このごはんは食べていいのか」と迷う愛犬と「指をかまれないよう」緊張する私。
しかし、続けていくうちに、ごはんはこうして食べるものだという認識が生まれ、ごはんを食べる愛犬から迷いと緊張が消えていったのです。
これで自信がついた私は、おやつも手に持ってあげることにしました。
愛犬は少し迷ったようですが、おやつをそっと食べてくれたのです。
結局、私の指は全くかまれませんでした。
慣れてくると、食器を持った手を少しゆすったりして慣らしていきました。
「ごはん、おいしい?」
「ごはん、いいね」
そのうち無言だったごはんタイムにも声かけができるようになり、フードアグレッシブは徐々に改善されていったのです。
フードアグレッシブ問題行動のその後
保護犬を選択した時点で、多少の問題行動がでることは覚悟していました。
それでも、ごはんタイムが楽しくないのはお互いにとってハッピーではありません。
今では、このフードアグレッシブを通して愛犬との関係に自信もつき、おもちゃなどの執着行動も段々と改善されていきました。
これまでの生い立ちが分からない分、食事やおもちゃに対する執着があることは過去の問題があるのかもしれません。
執着、とはごはんやおもちゃが私にとられることを心配するあまり、絶対に渡してくれないこと、またはその恐れによって私を攻撃することだと理解しています。
それでも、今の私と愛犬との関係を大切にし、執着しなくても大丈夫なんだということを伝え、常に愛犬のことを第一に考えて愛犬の気持ちに寄り添うようにしてこうと思っています。
おわり
管理人から一言
「フードアグレッシブ」
聞きなれない言葉かもしれませんが、この問題行動は、昔から当たり前に存在していました。
現在でも、この問題行動を放置していて、ゴハンの最中に凶暴になる犬はとても多いです。
言い換えれば、この犬はこうなんだと諦めている飼い主が多いということです。
ほとんどの犬の問題行動は、直すことが可能です。
すぐに解決する場合もあれば、根気よく数年続けなければ解決しない場合もあります。
この記事にあるワンちゃんの飼い主さんは、手でゴハンをあげることによって、愛犬との信頼関係や上下関係が改善されたようですね。
きっかけは、単純なことかもしれませんが、これがすべてのスタートかもしれません。
保護される前の、生活環境がトラウマになっているのならトラウマの原因追求は不可能でしょうから、その不安の枝葉を摘むように少しずつ解消していくほかないですよね。
ひとつ注意してもらいたいのは、これを真似て、手でゴハンをあげて成功するとは限りませんし、手であげて噛まれてケガをするかもしれません。
もちろんそうなっても苦情は受け付けません。
充分注意して行ってください。
今回の記事は、四国在住のWさんから頂いた体験談です。
どうもありがとうございました。
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