とても古いこの本を読むきっかけになったのは、意外にも2ちゃんねるに書き込まれたレスでした。
21: わんにゃん@名無しさん 2013/03/10(日) 17:57:59.67 ID:CecUQq1g
最近図書館で「よい獣医さんはどこにいる」という本を読んだがいい本だった。
巻末にチェックリストもある。
初版が2000年ですので、もう20年近く前の本です。
それの《新装版2003年》です。
人間でも、病院やお医者さんを客観的に選ぶ基準に、あまり新しさを求めることはないですし、当時と今では獣医や病院で違うことがあるのかと疑問に思ったのと、やっぱり単純にレビューが高かったのが理由です。
『よい獣医さんはどこにいる』の本の詳細
簡単に表題だけでこの本を判断すると、獣医さんを選ぶための指南本ですよね。
よい獣医さんはどこにいる
作者:坂本徹也
出版社:WAVE出版
発売日:2003年8月
(※本のリンクにはAmazonアソシエイトが適用されています。)
ページ数は259ページ。
ペット関連の本はだいたい200~300ページなので普通のボリュームかと思います。
まだ動物病院の数が今ほど多くない時代の、動物病院や獣医師さんの実態などを表裏なく赤裸々に書いてある、ペットジャーナリスト坂本徹也氏によるノンフィクションのルポルタージュ本です。
定価は、1,400円です。
古い本なので古本も沢山出回ってます。
読んでみて、この本を一言で簡単に表現すると、
非常に内容の濃い本です。
例えば、こんな昔(20年前)から混合ワクチンが毎年必要なのか疑問を呈していたり、2015年ノーベル生理学・医学賞を受賞した北里大学特別栄誉教授の大村智博士で有名になった、イベルメクチンと犬の危険性の問題など、私が知らない事実が多く、今読んでもとても新鮮に感じます。
私が感じた、この本の感想
読みやすさ | |
---|---|
オススメ度 |
3才のゴールデンレトリーバー、ガープの死
話を戻すと、この本は最初に、未熟な獣医師に出会ったことによる、ガープとその飼い主さんの不運な話から始まります。
1996年に実際にあった本人さんの証言や裁判記録を元に真実に基づいて書かれています。
ゴールデンレトリーバー、ガープの飼い主さんが散歩中に知り合った、同じゴールデンレトリーバーを多頭飼いしているA氏の奥さんとの出会いから、その獣医師を信用してしまったことによって愛犬を手術で亡くし、裁判をし、そして敗訴してしまうお話です。
それまでは、ペットショップから紹介された近所の動物病院でワクチン接種や定期健診などをしていたのですが、たまたま散歩中に知り合ったA氏に、カーブが下痢をしたときに診察してもらい完治したことにより、信頼してしまうのです。
(これは誰でもそうかと思います。)
悲劇の始まりは、口から吐いたところから始まります。
見た目にも元気なガープと散歩に出かけ、帰宅後に吐いたことをA氏に相談します。A氏は、動物病院を開業したばかりで、まだ施設が整っていないとかで、W動物病院へ連れていかれてしまいます。
結局、ガープはそのまま死んでしまうのですが、その経過や医療の経緯、死亡原因などに疑問があり、A氏に「それらを文章にして説明してくれ、それをみて納得できたら請求書をくれ」と要求したところ、W先生のマイナスになることは書けないとのことで揉めて、しまいには飼い主さんに弁護士から内容証明で38万円の請求書のみが送られてくるのでした。
それに納得がいかない飼い主さんが、元々裁判は勝つ見込みがないのはわかっていても(勝ったとしても犬の購入代金20万が限度)、真実を知りたかったためのに訴えたようですが、結局真実も語られず、和解案も拒否して38万円ほどの支払いで、この裁判は幕を閉じています。
その時の教訓から、ガープの飼い主さんが、獣医師や動物病院を選ぶ基準を述べられています。
- 近所で親切そうで、自分の愛犬をかわいがってくれそうだからとかの安易な考えで、病院を選ぶのは間違い
- 現在の病院で少しでもおかしいなと思ったら、すぐにセカンドオピニオンを選択する
リアルな犬の動物実験の実習
これは、大学の獣医学部での実際にあった実習の実態の話です。
20年近く前の本なので、現在とは多少違うのでしょうが、とてもリアルに実習犬ペロの話が書かれています。
その実習犬ベロは、内臓を摘出され、ワザと骨折させ、最後は安楽死の実習にも使われる犬です。
この話は、リアルすぎて衝撃的で生々しいのでここには書かないです。
(興味があれば読んでください。)
現在も、ほとんどの獣医系大学では犬など動物を使った実習は行われているようです。
しかし、ネットで検索してみると、
北里大学獣医学部では2018年前期から、犬に開腹・開胸手術をして安楽死させる外科実習を廃止したとの報道もあります。
徐々にですが、動物愛護団体さんなどの反対運動によって、バーチャルな実験の実習に代わりつつあるようです。
スペシャリストと街の獣医師さん
現在は、二次診療専門の動物病院が大きな都市を中心に増えつつあります。
しかし、この本を出版した頃(2000年)は、二次診療施設といえば、大学病院付属の病院以外は、整形外科はここの病院とか、股関節だとこの病院、眼科だとここなどと、各分野が得意な先生が日本中に散らばっていたそうです。
しかも、当時はまだ自称スペシャリストの獣医が多くいたそうで、他の獣医師さんが警笛を鳴らしています。
そして、この本でも結論としては、現在と同じように、二次診療はホームドクターからの紹介が理想だとされています。
それと、高度医療の理想として、大学病院が少ない地域では、開業している獣医がお金を出し合って検査が得意な人、外科が得意な人、心臓疾患が得意な人などがあつまって、二次診療施設を作って治療するシステムを作れば良いという獣医界からの意見というか提案が書いてあります。
それから20年余り、ここに紹介している大学以外の二次診療施設の設立理由になっている、仙台獣医師会 総合どうぶつ病院やどうぶつの総合病院などの二次診療施設が増えつつあります。
まだまだ地方には少ないでしょうけど、理想が徐々に現実に近づきつつあるように思います。
著者は、愛犬家のペットジャーナリスト
著者である坂本徹也氏の当時のプロフィールは、
(本に掲載されているデータです。)
とありますが、2005年以降から現在までの本の出版などの活動は確認できませんでした。
下記のような本も出版されていて、両方ともに紹介した獣医の本のように、取材を元にしたドッグフード業界のルポルタージュです。
[wpap service=”with” type=”detail” id=”4769812299″ title=”ペットフードで健康になる!”]
[wpap service=”with” type=”detail” id=”489295490X” title=”ペットの命を守る―いまからでも遅くない病魔からこう救え!”]
どれもレビューが高く、読んでみたいとそそられる内容のようなので、是非今度読んでみたいと思います。
著者が伝えたかった、よいホームドクターを選ぶ方法
一部、ホームドクター(かかりつけ医)の選ぶ基準が載っていたので紹介します。
理想のホームドクターとは、知識や技術よりも、相性と信頼関係が大事。
一人の獣医が治療して、入院したら歩き方を見て、自ら食事を与えて食欲を見て、一から十まで面倒を見るのが理想のホームドクターである。
上記を踏まえて、近所の動物病院を訪問する。
10分会って話せば、自分と波長が合う相性なのか判断できる。
よい獣医さんであるほど、自分の力の限界と、飼い主さんの力の素晴らしさを知っているそうです。
徹底的なケアをする熱心な飼い主さんが病気を治すのであって、獣医療は介助だけです。
飼い主さんの力添えがないと動物は治らないという事を知り尽くした先生こそが本当の名獣医です。
病気になってから、獣医さんと対面するほど愚かなことはないです。
良い獣医さんを見つけることは、ペットが病気になる前に済ませておく作業です。
例えば、同じ病気で病院を転々とし、それをその病院で話すと、必ず一つ強い薬が使われることになるでしょう。
ステロイドが段々と強くなっていくのです。
そんなことがペットのためであるはずがありません。
そうならないためにも、自分(飼い主さん)に合ったホームドクターを見つけておくことが大切です。
本の最後に、良い獣医さんを見つけるための70のチェックポイントが載っています。
おそらく、すべてが今でも通用するチェックするポイントだと思います。
正直、発刊は古く、殺処分が当たり前の時代だったころの本です。
今読んでも、ためになることが多い本だと思いますが、それよりもとても深く考えさせられる内容でした。
最後に、この本の著者が全ての取材を終えて、ガープの飼い主さんにまた犬を飼いたいか?を尋ねています。
その飼い主さんの答えに、この本が読者に伝えたいすべての意味が隠されていると思いました。
4.8 | 口コミレビュー | |
3.3 | 口コミレビュー |
関連記事
コメントはお気軽に♪